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陶磁器釉薬表面の触媒作用による緑茶カテキンの構造変化を世界で初めて発見 ―湯呑の中で緑茶が紅茶やウーロン茶に変化? 日本伝統の陶磁器技術と茶文化の新展開―

カテゴリ:プレスリリース|2023年07月05日掲載


発表のポイント

〇 陶磁器の釉薬表面における触媒作用により、緑茶に含まれるカテキンが選択的に酸化し、紅茶やウーロン茶などの発酵茶に多く含まれるテアフラビン*1とその酸化物およびテアルビジン*2などの重合体が生成することを世界で初めて発見した。
〇 健康改善に寄与するカテキンのin-situ合成や、風味の変化が楽しめる茶器の開発など、古来より世界中で楽しまれてきたお茶と陶磁器の新たな融合的機能創出が期待できる。

概要

 本学大学院工学研究科、先進セラミックス研究センターの白井孝准教授、辛韵子特任助教、加藤邦彦特任助教、紫藤壮大氏(研究当時:生命?応用化学専攻)らの研究グループは、異なる金属酸化物を有する市販釉薬を用いて、茶葉から抽出した緑茶カテキンが、陶磁器の釉薬表面の触媒作用により、緑茶に含まれる種々のカテキンが選択的に酸化され、紅茶やウーロン茶などの発酵茶に多く含まれるテアフラビンとその酸化物、およびテアルビジンなどの重合体が生成することを世界で初めて発見しました。すなわち、茶葉の発酵過程における酸化酵素によるカテキンの酸化と同じ反応が、釉薬表面の触媒作用により生じたことを意味します。今後、人類の健康改善に寄与するカテキンのin-situ合成や、風味の変化が楽しめる茶器の開発など、古来より世界中で楽しまれてきたお茶と陶磁器の新たな機能創出が期待できます。
 なお、本研究の詳細は、2023628日(日本時間)にイギリスのネイチャー?リサーチ社が刊行する学術雑誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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研究の背景

 お茶の歴史は古く、紀元前2700年頃まで遡り、「カメリアシネンシス」というツバキ科の茶の樹の生葉を、乾燥、発酵させて作られます。その発酵度合いの違いにより、緑茶、ウーロン茶、紅茶など様々な種類のお茶になります。特に天然フラボノイドとして緑茶の中に多く含まれているカテキンは、心血管疾患やがんに対する保護物質として報告されるなど、人間の日常生活で最も身近で健康に良いとされる飲料の一つです。近年、ペットボトルの普及に伴い、どこでも楽しめるようになった緑茶飲料ですが、日本においては茶道に代表されるように、緑茶の味と茶器の美しさを楽しむ習慣、文化が人々の生活に根付いています。一般的な陶器や磁器などの湯呑は、粘土などを成形した器の表面に釉薬と呼ばれるガラス質の材料でコーティング(釉掛け)され作られます。釉薬は、陶磁器表面の小孔を塞ぎ耐水性を付与するだけでなく、異なる金属酸化物種の添加および焼成により構造制御された金属酸化物相が結晶化し、多種多様な色彩で装飾する意匠性を楽しむことができるため、古来より世界中で、日用品から芸術品まで様々な用途での技術開発が行われてきました。

研究の内容?成果

 本研究では、異なる金属酸化物(Cu2O/CuOCoO2Fe2O3TiO2等)が配合された市販釉薬(オリベ?ナマコ?イラボ?トウメイ)を用いて、陶磁器ピースに釉掛けし、1250℃の焼成により釉薬相サンプルを作製しました。図1a1250℃で焼成後の釉薬相サンプルを示します。茶葉から抽出した緑茶とそれぞれの釉薬相サンプルを、混合直後と、80℃で6時間保持した際の緑茶の写真を図1bに示します。時間経過前後の緑茶の色を比較すると、緑茶の色が濃い茶色へ変化し、釉薬の有無および種類によって濃度が変化することが観察されました。このような濃い茶色は、カテキン分子の酸化重合反応により生成されたオキシテオタンニン色素を示した色として知られています。オキシテオタンニンは赤味がかったオレンジ色を持つテアフラビンと、茶色がかったテアルビジンと二種類分類されており、テアフラビンやテアルビジンは紅茶やウーロン茶などの発酵茶の中に多く含まれていることが知られています。

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1a)焼成後の釉薬相サンプル
  (b)茶葉から抽出した緑茶とそれぞれの釉薬との混合直後の写真(上列)
    80℃で6時間保持した緑茶の写真(下列)

 

 これら保持前後の緑茶中のカテキン成分の変化を調査するため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC*3を用いて定性定量分析した結果を図2に示します。茶葉から抽出した緑茶原液(図中、Prostineと記載)からは、Gallocatechin(GC)Epigallocatechin(EGC)Epicatechin(EC)Epigallocatechin gallate(EGCg)Gallocatechin gallate(GCg)Epicatechin gallate (ECg)Catechin gallate (Cg)の計7種類のカテキン成分が主に検出されました。比較試料として用意した緑茶のみのサンプル(釉薬添加無、図中、Referenceと記載)において、806時間保持後、新たな成分としてテアフラビンが多く生成されることが観察されました。これは、図1b中において時間経過後の緑茶はテアフラビンの赤味がかったオレンジ色を示したことと一致しています。一方、釉薬と混合した試料はカテキンの量が顕著に減少しましたが、テアフラビンの生成量は釉薬添加無しの試料より低く検出されました。これは釉薬の添加効果により、生成したテアフラビンがさらに酸化し、別の物質(後述)になったことを示します。図3aHPLCから計算した、釉薬の有無および種類の違いによって、緑茶の主成分である4種類のカテキン(EGC/EC/EGCg/ECg)の濃度変化を示します。また、図3bに茶葉から抽出した緑茶原液中の各カテキンの濃度を100%としたときの、釉薬の有無および種類の違いによる各カテキンの濃度変化の計算結果を示します。釉薬添加無し(図中、Referenceと記載)の試料と比較すると、Cu?Fe?Co系酸化物を含むイラボ?オリベ?ナマコ釉薬は選択的にEGC/EC/EGCg/ECgを酸化させることがわかりました。また、三種類の釉薬の中では、イラボを用いた場合に最もカテキンの酸化が見られました。一方、Ti系酸化物を主成分としたトウメイ釉薬は、EGCgのみを選択的に酸化させることが観察されました。以上の結果から、釉薬を添加した試料では、緑茶中のカテキンの減少および濃い茶色へ色変化したことから、カテキン分子が釉薬表面で酸化し、重合反応によりテアルビジンが生成されると推測しました。
 推測される釉薬表面とカテキンの反応メカニズムを図4に示します。釉薬とカテキンの反応メカニズムとしては、釉薬中に含まれる金属酸化物がルイス酸として機能し、カテキン分子から脱離したプロトンや電子と反応し、カテキン分子から中間生成物のカテキンラジカルもしくはオルトキノンが形成されます。形成された中間生成物は更に水素?一酸化炭素?二酸化炭素の脱離により、重合反応が促進し、テアフラビンとその酸化物およびテアルビジンなどの重合体が生成されると推測しました。

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2 抽出直後の緑茶原液(Pristine)と釉薬添加有無及び6時間反応後の緑茶試料のHPLC結果。
   (a) 242 nm and (b) 272 nm。

 

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3aHPLCから求めた、釉薬の有無および種類による四種類のカテキン(EGC/EC/EGCg/ECg)の濃度変化
 (b)茶葉から抽出した緑茶中の各カテキンの濃度を100%とした、釉薬の有無および種類による各カテキンの濃度変化の計算結果。

 

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4 本研究より推測した釉薬とカテキンの反応メカニズム

社会的な意義

 これまで陶磁器における耐水性や意匠性の付与を目的として技術開発されてきた釉薬ですが、釉薬表面の触媒作用により、緑茶に含まれる種々のカテキンが選択的に酸化され、紅茶やウーロン茶などの発酵茶に多く含まれるテアフラビンとその酸化物、およびテアルビジンなどの重合体が生成する、すなわち茶葉の発酵過程におけるカテキンの酸化酵素による酸化と同じ反応が、釉薬表面の触媒作用により生じたことを意味します。今後、人類の健康改善に寄与するカテキンのin-situ合成や、風味の変化が楽しめる茶器の開発など、古来より世界中で楽しまれてきたお茶と陶磁器の新たな機能創出が期待できます。

今後の展開

 機能性釉薬の開発について、産学連携体制で共同研究に取り組むことにより、国際競争力のある製品開発への展開が期待されます。

用語解説

(*1)テアフラビン (Theaflavin) :フラバノールから構成される抗酸化性のポリフェノールで、茶葉を紅茶に加工する発酵の過程で、酵素による酸化を受けて生成する酸化物。

(*2)テアルビジン (thearubigin) :茶葉が発酵する際に酵素的酸化によって形成されるポリフェノールの重合体色素。

(*3)HPLC:高速液体クロマトグラフ法(High Performance Liquid ChromatographyHPLC)はクロマトグラフ法の一種に分類され、液体中の成分を固定相と移動相の相互作用の差を利用し分離?検出する手法。

論文情報

論文名:  Glazes induced degradation of tea catechins
著者名: Yunzi Xin, Sota Shido, Kunihiko Kato and Takashi Shirai* (*責任著者)
掲載雑誌名: Scientific Reports
公表日: 2023年6月28日(日本時間)
URL:   https://www.nature.com/articles/s41598-023-37480-8

お問い合わせ先

研究に関すること

名古屋工業大学大学院工学研究科 工学専攻(生命?応用化学領域)
先進セラミックス研究センター
准教授 白井 孝
TEL: 052-735-7536
E-mail:
shirai[at]nitech.ac.jp

広報に関すること

名古屋工業大学 企画広報課
Tel: 052-735-5647
E-mail: pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。


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