日本では人口が減少する傾向にありますが、世界的には今後も人口が増えていくと予想されています。そのため、安定した食糧確保は地球規模での重要な課題です。食糧を下支えする植物に着目し、植物免疫の仕組みを解明することで、安定した食糧供給への寄与を目指しています。
植物の病害抵抗性は、植物ホルモンが関与する二つの主要なシグナル経路によって制御されています。一つはサリチル酸(SA)が単独で作用する経路で、もう一つはジャスモン酸(JA)がエチレンと共同で作用する経路です。SAシグナル経路は、植物組織を生かしたまま感染?増殖する病原菌に対する抵抗性に、JAシグナル経路は、感染初期に植物組織を「殺して」栄養を摂取し増殖していく病原菌に対する抵抗性に重要であり、両経路は多くの植物において互いに拮抗しています。一方で、近年、酢酸がJA経路の亢進を介して様々な植物の乾燥耐性を向上させることが報告されています。本研究室では、イネの幼苗に対して、オリゴ糖の一種であるイソマルトオリゴ糖を酢酸とともに処理すると、酢酸を単独処理したときに比べてJA経路は抑制され、SA経路が亢進することを見出しました。このことから、イソマルトオリゴ糖が、酢酸によって亢進したJAシグナルの一部をSAシグナルへとシフトさせている可能性を提唱し、2024年度に本結果をまとめた論文報告を行いました。
植物の生理現象に関与する様々な遺伝子の発現解析や、植物細胞構造の比較?観察などで対応実績があります。