素粒子の量子論と重力の一般相対論を統一した量子重力理論の候補として、超弦理論の研究を行っている。特に、量子論的時空とは何か、それを記述する幾何学は何かを見出すことが理論の完成への近道と考え、非可換幾何学、量子群、一般化された幾何学などの様々な手法を用いて数理物理学的な解析を行ってきた。これらを統一した一つの幾何学的構造とは何かを知ることが現在取り組んでいる研究である。
「タキオン凝縮によるDブレーンの生成と分類」
超弦理論は10次元時空の中の弦を構成要素とする理論であるが、理論にはDブレーンと呼ばれる弦が端を持つような超平面も存在しうる。更に不安定なDブレーンも存在し、タキオン凝縮により安定なDブレーンに崩壊し、またその帰結として、Dブレーンの電荷はK理論で分類される。この研究では、0次元の無限個の不安定なDブレーン系のタキオン凝縮により、より高次元の超平面を成すDブレーンが構成できることを示した。このことから、Dブレーンが非可換多様体として特徴付けられること、またそれらがK理論と等価なKホモロジーで分類されることを初めて明らかにした。その後の研究では、超平面形状のDブレーンだけではなく、球面状のDブレーンなども構成し、曲がった超曲面にも適用できることを示した。この手法はまた、非可換な超曲面形状のDブレーンが時空の中では可換な超曲面として存在することを示し、Kホモロジーの分類に非可換Dブレーンを含めることを可能にした。